名も知らぬ草に blog

管理人:草(そう)

・トゲには /林真理子のエッセイ「口紅の塗り直しは」/エリザベス女王。ほんとうのマナー /たばこと喫茶店 /たばこのカミングアウト /ちょっと煙草屋へ  

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 このまえ。日記を確認したあと。足のうらにチクリと痛みが走る。トゲがささったらしい。 ゆびでなぞってみるけれど、とれない。 友人に「カッターナイフちょうだい。」「何するん?」「とげ。」 チキチキと刃をだす。「深く切ったらあかんで?」「だいじょうぶ。」 トゲにはこれがいちばん。
 ナイフの刃先を寝かせるようにして、表面をけずっていく。足のうらの皮膚も薄いため、トゲが透けてみえる。 すこしずつ、かつ大胆に。 トゲがはっきりとみえる。ようし、もうちょっと。 トゲに沿って並行に刃をいれて思い切ってけずっていく。あ。ポロリととれた。「とれた。」「おぉ。」 「ちゃんと消毒しとくねんで?」「うん。」 ここはひとつ友人の顔をたてて、台所用アルコールスプレーを吹きかける。「薬ぬってな。あるか?」「オロナインにするわ。これ何でも効くから。」と応えながらオロナインを塗りすぎてティッシュでふき取る。それから、「あしたになったらはがれてるだろうけど」と照れ笑いしながら、バンソーコーをテキトーに貼りつけておく。

 

 

 18日。病院。 先生「調子はどうですか。」「はい。いつもどおりです。」 おもいきって先生に訊いてみる。「先生。ジンギスカンの踊りってどんなふうに……?」「あぁ。んーー。とくにないよ。」 「テキトーに? こんな感じですか。」「そうそう、みんなテキトーに踊るの。」 「面白そうですね(^^*) じゃあこんど踊ってみようかな……」「うんうん、いいと思いますよ。あれは楽しいもん。」

 


 林真理子のエッセイから、思い出し書き。 あるとき、連載小説か何かの締め切り前、林真理子がホテルで「カンヅメ(缶詰=作家などが締め切り前に集中して書くために(他の誘惑がない)ホテルにこもること)」をしたのだけど。洗顔したあと、化粧水などのお化粧品を持参してこなかったことに気付いて、彼女はあせった。そのホテルの部屋にはアメニティグッズ(利用客が使ってもいい化粧品類)がなく、洗った顔のお肌が(冬のホテルの暖房もあって)刻一刻とパリパリと音をたてそうな勢いで乾燥していく。 林真理子は、「あっ」とテーブル上のコーヒーに添えられたポーション・ミルクを発見。なにも考えず、とにかくそのミルクをお肌にわーっと塗りつけた。すると、みるみるうちにお肌がつやつやしっとりぷるりんと潤ってきて。コーヒー用のミルクが乳液の役割をみごとに果たした。林真理子は思った。「なぁんだ。ミルクでいいんだ。ふだん私が使ってる何万円もする化粧品、あれは何だったの??」

 林真理子エリザベス女王も出席する晩餐会に招かれたときのこと。その会食の席で。 お料理を食べたら口紅が落ちちゃったけど、人前で口紅を出して塗り直すのもマズイだろうし。みんなはどうしてるのかしら……と見まわしてみたら。 林真理子の隣り?にいたエリザベス女王が、誰かとの会話が一段落したときに、テーブルクロスの下からコンパクト(鏡)をだして左手にもち、エリザベス女王はちょっとだけうつむいて、サッと口紅を塗り、それをまたササっとしまうと、エリザベス女王は何事もなかったかのように笑顔になってふたたび誰かとの会話にもどった。ほんの一瞬のできごとだった。 林真理子は「あ~、あぁすればいいのか(@_@) さすが女王様、すごいわ。」と感動したという。

 エリザベス女王のもうひとつの伝説。 アフリカの国の王族を招いての晩餐会。アフリカの王族のお后様が、運ばれてきたフィンガー・ボウルを(それは指先を洗うもの)、両手でもってごくごくと飲んでしまった。周りの人は『ちがうっ。』という空気に。するとエリザベス女王は、自分の前にあるフィンガー・ボウルを持ち上げて、アフリカのお后様と同じようにごくごくと飲んでみせた。 そのとき同席していた人たちは、その出来事をふりかえって口々にこう言った。「あれこそ、マナーの真髄だ。」

 

 

 たばこのカミングアウト。 19歳から吸いはじめ(デビューはショート・ホープ→19でサムタイム・ミアス※メンソール→19の冬にシルクロード→24からバージニア・スリム6mg)、かくれて吸っていたけれど、25のときに母にバレた。
 母と妹と彼氏と4人で岩手の祖母の家に遊びにいってたとき。何かの話の流れで、母がわたしに「アンタは煙草すわないもんね。」と言って、すると祖母が「〇〇ちゃんは吸ってるべ。(^^*)」とするどい発言をして、わたしは思わず正直に「、う、うん。吸います m(__)m」と答えてしまった。母は「〇〇!いつからそんな不良になったのっ?!」とびっくりしていたけれど。
 おばあちゃんのおかげでカミングアウトできてよかった……。父はうすうす感づいていたらしく。「まぁ、いいじゃないか(^^)」と認めてくれた。
 母にカミングアウトしてからは、母が吸うときに「アンタもどう?ほら、遠慮しないで。」と勧めてくれたりして、いまでは良きたばこ友だち。でも、肩身がせまい。

 


 たばこをどうするか。 一緒に食事やお酒のとき、相手が非喫煙者なら、わたしも吸わないかな。妹は「どうぞ。吸いたいでしょう(^^*)」と言ってくれるので、「〇〇ちゃん優しいねぇ、ありがとう。」と吸う。 小さな喫茶店では、天井の換気扇の位置をたしかめて、その近くの席に座ったり。いま吸ってる煙がちゃんと換気扇に吸い込まれていくかなと、煙の行方を目で追ったり。

 

 喫茶店にひとりのときは、たばこ一本だけだと、わたしが退店したあと灰皿を片付ける人が「これだけかよ。」と微妙な気持ちになるだろうから、もう一本すう。三本まではいかない。 喫茶店のすみっこの席で、ふぅとひと息ついて、それから、文庫本をひらいて読むふりをしたり、卓上の「おすすめケーキ」のお品書きをみたり、さっきのライブのセットリスト(演奏する予定、あるいは演奏した曲目)を脳内で再生しながら何度も読み返したり。コーヒーを半分だけ飲み、たばこを2本くゆらしたら、さっと出てくる。ひとりの喫茶店では長居しない。

 

 

 たばこといえば。昭和の時代は。旦那さんが日曜に、公衆電話から浮気相手に電話をかけにこっそり勝手口から出掛けようとすると台所の奥さんが「アナタ。どこへいらっしゃるの?」と訊く。旦那さんは「うん、ちょっと。煙草かってくる。すぐ帰るから……、」と、しどろもどろの嘘。いまは、たばこをやめているか、もともと吸わない男の人が大半だけど、休日に浮気相手に会いに行くときは、どんな言い訳してるんだろう。男の人の嘘はわかりやすい。

 

 あぁそうだ。「男はつらいよ」の寅さんが喫茶店のことを「きっちゃてん」というのがいい。 寅さんが片想いするマドンナのいる喫茶店にいきたくてソワソワと「とらや」から出掛けるときの、おいちゃんとのやりとり。「寅、どこ行くんだい?」「ちょいとな。きっちゃてんよ。」 「お前が喫茶店??」「なにね。たまには、コーシーでも飲んでみようと思ってサ。」