名も知らぬ草に blog

管理人:草(そう)

・おじや /赤いウィンナと祖父 /放心 


2022.4.3 日曜夜1。大根のおみそしるの残りでおじや。 おじやをサラサラとかきこみながら。ふと思い出した岩手(花巻)のおじいちゃんのこと。
犬にやるおじやに赤いウィンナーころんと入れて「きょうはごちそうだ。」


 幼い頃のある夏。 母の実家の岩手(花巻)に帰省したとき。
ある夜。おめさもこい、といわれて祖父のガタピシする白い小さな軽トラックで真っ暗な田舎道を。
到着したのは祖父の田んぼ。 その田んぼから何かをプチっとちぎって祖父はわたしの手にそれを手渡し、「これはイネ(稲)だ。」 わたし「イネ??」 祖父「おめさがいつも食ってるコメだ。」 ふぅーん。わたしがいつもちぎって遊んでるネコジャラシみたいだなぁ、と思いながらそれ(イネ)を指先でくるくる回して、その辺にポイっと捨てた。 「雨の日も風の日もこごに見に来るんだ。やっとこごまで大ぎくなったんダ。」と祖父はどこか誇らしげに言った。

それからまた軽トラックで暗い道を走り、ある所で停まる。 暗がりのなかに木造の小さな小屋と、そこにつながれた犬。
祖父がさっきの夕ご飯の残りのおじや(ご飯にお味噌汁をかけたもの)の入ったベコボコにへこんだ鍋を犬のまえに置くと、そこに赤いウィンナーをころんころんと放り込み、「きょうはごちそうだ(^o^)」。 犬は尻尾をふりながら、お鍋に顔をつっこんでものすごい勢いで食べている。
その犬に祖父は「んめか(うまいか)? んめな。ん、ん。 いがったな(よかったな)。(^o^*)」と声をかけて、祖父はうんうん、と うなづきながら、犬の食べるのを眺めていた。
数年前に気づいた。 もしかして、(わたしたちが来たことを)祖父はうれしかったのかも? うれしくて犬に「ごちそう」の赤いウィンナーをおすそわけしたのかも。 
祖父は不器用で口下手でシャイなひとだったけれど。 そっか。おじいちゃんうれしかったのか……。


 その犬は、元:野良犬で。 ガリガリにやせて、死にかけている犬を、祖父が山の中でみつけて、おんぶして家に連れ帰ったという。
赤いウィンナーのときにみた犬は肉がもりもりとついた身体で、祖父とわたしが近づくと尻尾をぶんぶん振りながら「あぅん、あうぅん♪」とうれしそうに鳴いていた。


(母の実家)祖父母の家は貧しかった。食べていくだけで精一杯。
なのだけど。 祖父は困っているひとをほうっておけないひとだったらしく。
見知らぬ旅人を家につれてきて、何日も泊めてあげることがよくあったらしい。
旅人さんの身の上話をうんうんと聞いてやり(祖母がお茶を何杯でもいれてあげる。漬物も切ってだす)、一番風呂をすすめたり、ふだん祖父母たちが食べないようなごちそうで旅人をもてなし。
旅人の帰るときにはおみやげ(祖父の大切な江戸時代とかの掛け軸など)をもたせて、こう言う。
「おめさ(おまえさん、あなた)、困ったら、いづでもオラのとこさ来い。 遠慮すだらダミだ、おらのとこさ来い。(^▽^*)」

そんなことが何度もあったらしい。 祖父にとってはそれがあたりまえのことで。
おばあちゃん(わたしの祖母)何気にたいへんだったかも^^; 
でも祖母は、祖父のそんなところがすきだったのかも……。と想像。


ちなみに祖父母はお見合い結婚。 結婚式の当日にはじめてお互いの顔をみたという。
結婚式のあと、ふたりの新居となる家へ向かう田んぼの小さなあぜ道をふたりで歩くとき、祖父は祖母の手をとって、しっかりと手をつなぐとこう言った。「トウキョウ(東京)では、アベックはこうやって歩くものなんダ。」 生まれて初めて男の人と手をつないだ祖母は、顔を真っ赤にして、ひとことも返事できない。
「これがらは、おめさとおら、ふたりで生きていぐんだ。」 祖母「……。(*v.v) 」
新婚時代に、祖父からプレゼントされた口紅(貝殻のなかに紅(べに)が詰めてある)を、祖母はその後も大切にたいせつに使い。 紅筆でほじくっても もう何もでてこないその貝殻を、まるで宝物のように、いちばん大切なものをいれておくひきだしにしまっていた。
そしてときおりわたしたちに「おらのタカラモノだ(^o^*)」といって、その貝殻をみせてくれて。 そのあとまた大切なひきだしに、そぉっとしまうのだった。


……と。 イーハトーヴの小さな昔話でした。 めでたしめでたし。?
祖父母たちも、あの家も、もうない。


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2022.4.4 早朝。 ヤクルトを少々。
ふと、宮沢賢治 と検索したら。 宮沢賢治、花巻の出身だったという^^;; はじめて知った。
……。 ゾワっとなった。 全身のちからぬけてくる。なにこれ。


キリンジをちょっとだけ。 おぉ…… あふれてくるなにか。

お外は雨しとしと。 きょうは一日 雨らしい。
さゆ(温かいお湯)のみながら 放心。