名も知らぬ草に blog

管理人:草(そう)

・2011より /池波正太郎。食事メモ。 /かみしめていく /ラジオより。俺の再生ボタンを /ずっと続いてく /生まれた街で。イヴァン・リンス。名もなき道化師。ジョン・メイヤー。ワンダフルクリスマスタイム。カンフーファイティン 

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2011.3.3 池波正太郎。食事メモ。

 

 朝、目覚めてお茶を飲みながら何気なく耳の手前をかくと、カピカピしている。カピカピを辿ると目尻に行き着いた。悲しい夢でも見たのですか。 ごみを集積所に置き、冷たく痛いような空気に身をちぢこめ、早足で家へ戻る。三月というともう春かなと思うけれど、早朝はこんなに底冷えするんだなぁ。 ここしばらく散歩をしていない。どうしようかなと迷って行かないでしまう。

 

 図書館で借りた池波正太郎の「新しいもの 古いもの」という随筆本、そのなかの「私の食卓の情景」を読んだ。一週間ぶんの朝昼晩の食事内容が淡々と記されている。 お酒が好きらしく、毎日何かしらのお酒を、日によっては昼にも夜にも。興味深かったのは、そのとき飲むお酒は一種類だけ、酒量も二杯とか二合とかで、それを越えることはないらしいこと。この人はきっと、美味しいところでやめているんだなと思う。「美味しい」を過ぎて「なんだか美味しくない」になりかけたら、(あるいはその手前で)そこでぴたりとグラスや杯を置くんだろう。

 

 その頁から三日分を丸写し。

「月曜/朝。カブのみそ汁、牛肉薄切りバター焼き、漬け物、ご飯 一杯 /昼。筍と鶏肉のうま煮、鯛刺身、サラシクジラの酢みそあえ、ハモ吸い物、ご飯 1.5杯、清酒 二合 /夜。もりソバ(信州上田、刀屋の手打ち)、オンザロック 二杯」

「火曜/朝。かけソバ、煮豆、漬け物(タクアンにカツオブシをかける) /昼。ハンバーグ(マッシュポテトとニンジンのバター炒め添え)、まぐろの山かけ、豆腐の吸い物(生姜の絞り汁入り)、筍ご飯 一杯、一夜漬け /夜。ベーコンエッグ、トースト一片、オンザロック 二杯」

「水曜/朝。チャーハン、カツオ角煮、一夜漬け /昼。フランス料理フルコース(外食)、ハイボール /夜。赤飯 一杯、ガンモとゴボウの煮しめシェリー酒 二杯」

 

 

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・2011.3.20  世界は変化

 

 その次のニュースは、リビアという国の内戦への軍事介入を国連が認め、アメリカ・イギリス・フランスなどの欧米諸国が攻撃を開始したというもの。日本政府もそれを支持するとのこと。 今回の震災以前はテレビをほとんど見ていなかったわたしの頭に、このニュースは唐突に飛び込んできた。事情がよく分からないけど、えーと。
 リビア社会主義国で、カダフィ大佐は独裁者で、国民が革命を起こして内戦に……という状態だったのかな。 食べ終えたお茶碗もそのままで、しばらくニュース画面に見入る。いきなり過ぎて感想もでてこない。 わたしの知らないうちに世界ではそんなことが起きていたのか。


 緊迫した内容のニュースが終わって一時になった瞬間、キンコンカン♪のメロディーで「NHKのど自慢」が始まった。あまりの場面転換に「えーっ?!」と驚いて、ちょっと笑ってしまった。 そういえば震災以来、はじめて笑ったかも。


 ふと見渡せば、わたしを取り巻く世界はつねに変化していて。その中のごく限られた平穏のなかに、今は運良く居るだけなのらしい。 たとえばご飯、たとえば珈琲、やすらかな午後、温かさに触れたこと、丸い猫、ふっと微笑んでしまうこと。二度とは訪れないその一つ一つを、これからはもっとかみしめていきたいなぁ。 今朝シャンプーで髪を泡々にしているとき思い出した、いつかの自分の言葉。わすれないように記しておく。

 

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・木綿の日曜日 (※2004.12)


衣ずれのように彼はきて
背中から そっと何かを羽織らせてくれた

日曜が手をふる
わたしも手をふる
ありがとう

何事もない一日をありがとう 

 

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・ Cotton Sunday  (※ 2004.12)


Please put him on like a difference of clothes.
You made them put something on quietly from a back.

Sunday waves its hand.
I wave my hand, too.
Thank you very much.

Thank you very much for your one

 

 

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・2011.10.13  ずっと続いてく 

 

 夕方。パソコンで何か聴こうかなと思いかけて、違う、いま聴きたいのはそれじゃない、とMDを探る。 オーマイレディオというラジオ番組を録音したMD。日付は2008.3.20 、番組終了まであと二回というときのもの。

 

 くすくす笑いながら聞いて、番組終盤の「〇〇アーカイブ」というコーナーになる。そのコーナーでは毎週一つのテーマに沿ってあの方が語る。この回は【オーマイレディオ(この番組)について】。
 番組開始からの一年間を振り返ったあと、あの方の語りが熱を帯びてきて、その胸にあるものを何とか取りだそうと必死に言葉を探しながら、そして気持ちに言葉が追いつかないのか、つっかえつっかえ話す。
 「この番組はあと二回で終わってしまうけど、んと……ここで僕が話したり、○○や△△が面白いメールを送ってきてくれたことは消えないんだよね、それは誰にも消すことはできなくて……。 それで俺、なんか不思議なんだけど、この番組が終わっても、こうして皆でワーっとやってるこの感じがずっと続く、続いてくような感じがして。 終わらないんだよね。どこかでそれはずっと続いていって……。むしろね、始まるの。今までそうだったように、これからもね、いつも始まってるの。そんな感じがするの。
 だから俺ほんとはさ、△△とか○○とかの所に行ってね、一人一人に話したいんだよな。もし今後あなた方がさ、つまんねーなとか寂しいなと思ったら、再生ボタン押せばいいんだ。そしたら俺そこで幾らでも喋るから、だから俺の再生ボタン押してくれたらいいんだ。」 聞きながらわたしは袖口で頬を拭い、ティッシュで洟をかむ。いつにもまして訥々と話すあの方の後ろ、それまで賑やかな笑い声をあげていたスタッフがシーンとなっている。もしかしたらラジオの向こうのあの方も泣いているんじゃないか、必死に涙をこらえているんじゃないか。そんな空気だった。 (※聞いた後に思い出しながら書いたので、「」の語り部分は一言一句そのままではありません)

 

 MDにはラジオ番組のあとに数曲、いいなと思った音楽が入っていて、それも聴いた。どうやらこれはカセットテープで録音したのらしい(カセットで録ってMDに保存)。音が温かい。
 そのうちの一曲が、お気に入りだったのに曲名とアーティスト名を思い出せずに(メロディーは浮かぶ)もどかしくて昨日ずっともやもやしていた曲で、「そうよ!ジョン・メイヤーよ♪」と嬉しい。