名も知らぬ草に blog

管理人:草(そう)

・はつかり、赤いウィンナー /父のお弁当 /パパとなっちゃんのお弁当 

 

 「夢のつづき」を聴いていたら、列車の窓の向こうで手を振る岩手のおじいちゃんの姿が浮かんだ。
 わたしが小学生のとき。岩手の祖父母が泊りがけで東京に来て、帰るときのこと。
祖父母は上野駅であわただしくお弁当を買い、列車に乗り込んだ。祖父母が座席につくとまもなく列車の扉がとじて、発車のベルが鳴り始めた。
すると、おじいちゃんが立ち上がり、列車の窓を開けようとしている。しかしその列車は特急のため窓が開かない仕組みになっていた。 窓の向こうで、おじいちゃんが身ぶり手ぶりをまじえて、口をぱくぱくさせて何か言っている。
母は「え?なに?! 父さん、聞こえねーよ!( ゚Д゚)」と叫んでいる。 わたしはとっさに大きくウンウンウンと頷いてみせ、おじいちゃんに手を振った。
列車はしずかに動き出し、どんどん速くなり、やがてホームから遠ざかっていった。
 おそらく祖父は「おめぇたち、身体に気をつけてな、仲良く暮らすんだぞ(^o^)」と言っていただろうから。それを聞こえたことにしたのだった。
 あのとき、わたしは初めて誰かのために嘘をついた。
あの列車は特急で、たしか「はつかり」という名前だったような。 東北新幹線はまだなくて。おぼろげな記憶のなか、あの列車はクリーム色にエンジの柄だった。


 岩手の祖父は、頑固で口数少ない人で、孫のわたしたちをとりたてて可愛がるといったことはなかった(と思う)。
幼い頃、母の実家の岩手に遊びにいったとき。
夕方、祖父が犬にエサをやりにいく際に「おめぇも行くか?」というので付いていくと。
真っ暗な道で祖父が軽トラックをとめて、暗がりから何かの草をちぎってきてわたしに見せる。「オラが作ってる米だ。」というそれは、ふだん遊んでいる野草のスズメノカタビラやノゲイヌムギに似ていて、これがお米になるの??と不思議だった。

 それから祖父は、小さな小屋の前につないである痩せた赤犬の前で車を停め、デコボコのアルミの片手鍋を持って犬のそばに歩いていく。お鍋には、おじや=ご飯にお味噌汁をかけたもの が入っている。
ワンワン吠える犬の前で、祖父はふところから何かをだして、お鍋に入れると「きょうはごちそうだ。ほれ。」といって、犬の前に置いた。よくみるとそれは赤いウィンナー。
お鍋に顔をつっこんで夢中で食べる犬に「んめが? んめな。ん、ん。いがったな(^o^*) (美味いか、うまいな。良かったな)」と、満足そうに頷く祖父。
 ごちそうの赤いウィンナー。 いま思うと、もしかして祖父は母やわたしたちに会えてうれしかったのかな。 それで「ごちそう」だったのかも。

 
 あの犬には名前はなくて、おじいちゃんは「ワン公」とか「ワンコロ」とか呼んでいたっけ。
もとは野良犬で、道ばたでお腹をすかせて死にそうだったのを祖父が面倒をみるようになったとか。 とくべつ動物好きでもない祖父だけど、やせっぽちでかわいそうな犬をほうっておけなかったのらしい。

 

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 4.20 夜。 偶然テレビのNNNドキュメントで見た「パパとなっちゃんのお弁当」。
 料理好きだった父を思い出す。 高校生のとき、たまに父が「よし、おとうさんがお弁当つくってあげよう☆」といってお弁当を作ってくれることがあった。
昼休みになり、お弁当のふたをあけた途端、わたしは赤面した。だって、ご飯が見えなくなるくらい、ご飯の上にお新香が敷き詰められていたから。
『これも、あれも、美味しいから、いっぱい載せてあげよう♪(^^*)』 父はそう思って色々なお新香を入れてくれたのだろうけど。お年頃のわたしは、「お父さんったら」と、茶色いお弁当がひたすら恥ずかしった。

 「パパとなっちゃんのお弁当」のお父さんはインスタグラムの「bento_ouji」さんで、高校生のお嬢さんに毎日お弁当を作っていた。
お弁当にはいつも、手書きのメッセージが添えられていて、そこには、他人であるわたしまで嬉しくなってしまうような、愛情があふれている。
「ティクワ弁当」とか「ナポリターン」とか、くすっと笑ってしまう呼び名もときおりあって。美味しそうなお弁当の写真と、そのメッセージを読むのが楽しみだった。
bento_oujiさんは、これからも、なにかお料理を作ったときにでも、や、食べ物じゃなくてもいいから、なにか投稿があったらいいな。

 

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YOUTUBE /

【父の想い】パパとなっちゃんのお弁当〜娘に作り続けた700回のお弁当
https://www.youtube.com/watch?v=JfhGbPoTH8g

 

夢のつづき /安全地帯
https://www.youtube.com/watch?v=WDi5KEzojec