名も知らぬ草に blog

管理人:草(そう)

・■防災トイレ /くらげ /紡木たく「ホット・ロード」 脈打つ世界

 先々週の土曜。友人が注文しておいてくれた防災用トイレが届いた。「非常用 トイレらくらくお助け袋(株式会社ニーズ)」という名称で、ポリ袋と消臭成分配合凝固剤が5セット入っている。これで一安心。 ちょっとそこの地震、どこからでもかかってらっしゃい。……や、来なくていいけど。

 ふっと思い出した。二十代の頃、上司がポツリとこう言った。「おまえ、クラゲみたいだなぁ……」「クラゲ、ですか」「うん、クラゲ。」
ほめているのかけなしているのか分からないけど、悪い気はしなかった。そうか、クラゲなのか。

 紡木たく「ホット・ロード」について書きとめておきたい。
1986年から別冊マーガレットで連載されていて、高2のわたしはそれをリアルタイムで読んでいた。別マの発売日の毎月12日が待ち遠しくてたまらなかった。発売日には帰りのバスを銀座4丁目で降りて数寄屋橋交差点の旭屋書店で買って、それを胸に抱いてドキドキしながら帰宅していた(帰り道で読んだりはしない。落ち着いてきちんと読みたいから、家に着くまで我慢ガマンだった)。
漫画を読んでいるとき以外でも「ハルヤマが死んだらどうしよう」「ママはわかってくれない」「きょおから不良になってやるっ!」「大事なともだちと喋っているときでも ドキドキしちゃう ひとりぼっちのような気がして ドキドキしちゃう……」そんな一つ一つの言葉がいつも耳の奥でコダマのように響いていた。和希(かずき)の痛みや悲しみや寂しさがそのまま胸に届いて、あの頃はまるでカズキがすぐ隣にいるかのような気持ちで過ごした(漫画の登場人物ではなく実在している人間みたいな)。授業中でもホット・ロードのことで頭がいっぱいで、ドキドキするときは「トクン、トクン、トクン……」という文字が浮かんだり、なにかあると「こんなとき、カズキだったらどうするかなぁ?」と思ったり、ひどいときになると胸のなかで「ねぇカズキ……」と話しかけたりして。
 あの漫画のすごいところのひとつは、髪が伸びていくところ。何年という単位ではなく、何週間(毎月)という感じで登場人物の髪が少しずつ伸びていくのだった。
紡木たくの漫画に出会っていなければ、今こうして日記を書いているわたしは存在していなかっただろう。紡木たくの、あの脈打つ世界を知らなかったら、きっと鈍感なオトナになって誰かを傷つけたり傷ついた気分になったりしていたかもしれない。 あぁ、久しぶりに紡木たくを読みたいな。ひきだしを探ったら「純 JUN」が出てきた。そうそうこれ、最高なの。